中国でのこと

ノモンハンへ行く――東北地方、内モンゴルの旅(2/2)

tnkt41.hatenablog.com ハイラル駅に到着したのは朝の7時前だった。どこまでも青く澄んだ空の下で、乾いた大気と明け方の草原の冷気に触れた瞬間、心が少し解放される感覚を覚えた。今年の冬には北京の大気汚染は随分と改善されたと報道がされていたけれど…

ノモンハンへ行く――東北地方、内モンゴルの旅(1/2)

ノモンハン、という言葉に初めて出会ったのは村上春樹の90年代の長編『ねじまき鳥クロニクル』を読んだときだった。80年代の世田谷に暮らす主人公は、ある日前触れもなく妻に家を出て行かれ、一方的な離婚をつきつけられる。妻はどうして出て行ってしま…

イーユンリーとの対話。

もしもここ数年で一番注目している作家は誰ですかと訊ねられれば、僕はイーユンリーの名前を即答する。 youtu.be 71年の北京生まれの作家で、北京大学を卒業後、免疫学の専門でアメリカのアイオワ大学に進学。博士課程まで進み学位を取得後、研究者にはな…

杭州旅行、覚えがき。

昨年11月に杭州を訪れた時にとても懐かしく思えたのは、ひとつに宋代の美意識が街に深く息づいているからだと感じたけれど、さらに時代を遡って越人が揚子江の流れにのって長江文明を運んできたことも深く関係しているのではないかと今になっては思う。 普段…

優しい木漏れ日の降るある秋の昼下がりにーー蓮沼執太と彼の音楽について

今からおよそ十年くらい前の優しい木漏れ日の降るある秋の昼下がりに、大阪の日本橋にあるK2レコードというCDショップを訪れた。その頃僕は自宅で浪人生をしていて、鬱々とした生活のなかでのほとんど唯一の楽しみが電車に乗って月に二回ほどそのレコー…

寮で出会った北朝鮮からの学生たちのこと。

TEDを観ていたら北朝鮮で140日間拘束されたという韓国系アメリカンのジャーナーリストの動画がのっていた。彼女の話を聞きながらふといくつかのことを思い出した。 www.ted.com 去年の暮れ頃に寮の共有キッチンでご飯を作っていると、韓国語を話す何人かの男…

世界で一番タフな15歳の少年――『海辺のカフカ』を読んで

授業発表のために村上春樹『海辺のカフカ』(2002年、新潮社)を久しぶりに読み返した。前回読んだときは漠然と物語世界をイメージするだけで終わってしまったので、今回は精読を試みた。いくつかの気づきがあったので、ブログにまとめてみようと思う。 ――物…

忘れられた大砲、民宿の彼女、大和賓館--大連、旅順旅行記

この夏はチベットへの旅行のほかに、もう一つの長い旅行に出かけた。北京から実家のある関西まで、飛行機を使わずに陸路で帰るという制限のもと、大連→韓国→九州・中国地方と旅をした。 先日にブログにも書いた映画の影響に加えて、自分自身も一度東アジアの…

じゅんさいと鉄砲玉――青海省、チベット旅行記

6月の終りから7月の上旬まで中国西北部に旅行にでかけた。目的地は西寧とチベット、いくつかの印象的な出会いがあったので、備忘録として残しておこうと思う。 西寧では列車に乗ってチャカ塩湖まで出かけた。この列車は最近開通したばかりで、青海湖を迂回し…

『Soul Odyssey ユーラシアを探して』鑑賞会

今年の1月に渋谷のアップリンクで『Soul Odyssey ユーラシアを探して』というドキュメンタリー映画を観た。監督の渡辺真也さんはドイツの大学でヨーゼフ・ボイスとナム・ジュン・パイクのユーラシア研究をされていて、ある年の夏に日本まで陸路を渡ってかえ…

サンマロでの思い出、或いはケルト文化と日本の繋がり。

二年前の夏に友人とフランスに二週間ほど旅行に出かけた。パリにある主要な美術館などを巡りたいというのはもちろんだけど、それ以上に中国で知り合ったフランスの友人カップルたちに会いに行きたいという思いが僕たちにはあった。 友人たちの家でもてなしを…

美しさは普遍的であるということ――盧溝橋と抗日戦争記念館

五月のある晴れた日の午後に友人と北京の中心街から少し離れたところにある抗日戦争記念館を訪れた。この記念館の隣には日中戦争開戦の発端となった「盧溝橋事件」の盧溝橋がある。特に意識していたわけではなかったけれど、今年は1937年の日中戦争開戦から…

山西省一泊二日の旅ーー平遥古城と双林寺

先月の話になるけれど、山西省中部にある平遥古城と双林寺にまで足を運んできた。どちらも世界遺産に登録されていて、最近では北京からも高速鉄道が通るようになり、小旅行にはとても適したところだった。余談になるけど、山西省は縦に長い省で、上から晋北…

マナンさん家での出来事

先日、マナンさんという大学の先輩が僕たちを招いてホームパーティを開いてくださった。実際には僕はマナンさんにお会いしたことはなく、友人たちがせっかくなら僕も一緒にということで誘ってくれた。地下鉄に小一時間ほど乗って、駅に近い閑静な住宅街を少…

バス停の彼女とクラスメートの彼ら。

先日、大学近くのバス停でバスを待っていたら、わりと綺麗な身なりをした同年代くらいの女性が突然声をかけてきた。いきなりのことだったので何を言っているのかよく分からず聞き返してみると、「私は今日、遠いところから北京まで旅行にやってきた。しかし…

老舎『駱駝祥子―らくだのシアンツ 』

中国文学読書会、老舎『駱駝祥子―らくだのシアンツ 』。学のないひとりの車引きの物語。 北京の方言を使って書かれた本で、最初は言葉に慣れるのに苦労したけど、後半はぐいぐいと作品に引き込まれてそのまま読了した。 20世紀前半の貧しかった時代の北京の…