胡同の帰り道

――北京での生活について、日常の雑感を書き記していきます。

三方を山に囲まれた、小さな川が数本流れる静かな街

 小さい頃から僕を近くで見守っていてくれた、いとこのおばあちゃんが入院をしたので今日はそのお見舞いに行ってきた。ここ数日の天気はずっと曇りだったけど、今日は朝から冬らしいきりっとした青空で、病院の窓から低い角度で鋭くでも暖かく差し込んでくる光がとても綺麗だった。

 おばあちゃんは手術後とは思えないくらいに元気な様子で少し安心した。たぶん術後の疲れもあって、ここ数日は誰とも話ができなかったのかもしれない、病院の生活で必要なものを持ってきて欲しいという話をしたあとに堰を切ったようにおばあちゃん自身のことについて色々な話を聞かせてくれた。故郷の話から、亡くなったおじいちゃんのこと、そしてどうしてこの街にやってくることになったのか。考えてみれば僕は親戚のなかでは一番の末っ子なので、おばあちゃんとふたりできちんと「話をした」のはこれが初めてだったし、その話は思っていたよりも波乱万丈に満ちたもので少なからず僕は驚いた。
 「ここは田舎やけど、すごく良い街やわ」とおばあちゃんが窓の外を見ながらぼんやりと言ったとき、僕の目にも本当にこの街が「田舎」に見えて「すごく良い」ところのようにも見えたのが不思議だった。自分の生まれた街をあんなに客観的に見つめた瞬間は今までになかった気がする。三方を山に囲まれた、小さな川が数本流れる静かな街。

 「今までの人生のなかで一番大変やったときはいつやった?」と僕は聞いてみた。
 「そんなもんいっぱいあって覚えてへんわ」とおばあちゃんは少し笑いながら答えていた。

地元に帰れば時間の流れを感じる。老いゆく人は老いていき、その一方で身内もどんどん増えていって、新しい命はぐんぐんと成長していく。おばあちゃんにとって、僕を含めて、新しい命の成長を見守ることは何よりの楽しみなんだと話していて感じた。多分、それは僕が想像している以上に。いずれにしてもいつまでも元気に長生きしてくれればと切に思った

帰り道、今までの人生のなかで一番嬉しかったときはいつやった、ということも聞けておけばよかったなと少し後悔した。

f:id:tnkt41:20160109172424j:plain