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胡同の帰り道

――北京での生活について、日常の雑感を書き記していきます。

信州横断の旅(3日目)~雪のなかの諏訪大社下社秋宮、春宮~

 

tnkt41.hatenablog.com

 

 旅行三日目。宿で朝食を簡単に済ませてから午前中の時間を使って諏訪大社を含む下諏訪の観光に出た。

 この日は朝から雪がこんこんと降っていた。諏訪湖に来る前に、ゲストハウスの人たちから、諏訪湖のあたりは標高が高いから須坂よりも寒いかもしれないと言われたので雪が降るのはよくあることなのかと思っていたけれど、宿のおじさんによればこれだけの雪が積もるのは随分久しぶりとのことだった。おじさんの年齢は還暦を迎えるかといったところで、生まれてこの方ずっと下諏訪で育ったのだそう。

「今朝テレビで雪道を歩くときの注意ってのをやってたんだ」とおじさんは言った。「歩幅を小さくして歩くとか、誰かの足跡をなぞるように歩くとかって。でも、地元の人に言わせれば、そんなの誰も気にしてないよ。何も気にしないで歩くけど転んだことなんてほとんどないや」

 僕はあまり雪の降らない町で大きくなったので雪道は結構苦労します、と伝えると、それじゃあ転ばないように気をつけて行ってきいや、とおじさんは送り出してくれた。

 

 下諏訪には古い町並みが残っている。そしてそれは何と表現すればいいのだろう。その古さはここに流れる時間の緩慢さと相まって人をして内省的にさせるものがった。細い裏路地を抜けるときや、町に残る小さな神社などを通りかかったとき、ふと自分は今どこにいるのだろうとそんな気にさせられる。昭和がそこに残っていると言っても良いのかもしれない。不思議な感覚を残してくれた町だった。

 

 宿から歩いてすぐのところに諏訪大社下社秋宮があった。

 

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 小さなショルダーポーチとカメラに傘を挿して歩いただけだったけれど、それでもこの雪のなか写真を撮りながら歩くのは結構大変だった。けれど、こんなに雪に包まれた諏訪大社を見られるのも滅多にあることではないと思うと少し励まされる気もする。

 

 

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 境内は人が少なかったというのに加えて、恐らく音が雪に吸収されたのもあってとても静かだった(特に本殿のなかを覗いたとき、そこだけ時間が止まっているのではないかというくらいに静けさに覆われていた)。ざくざくという雪を踏む足音だけがよく聞こえてくる。

 ここでも御柱と宝物殿を見学してから、今度は春宮へと向かった。

 

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 春宮では掃除をされていたおじさんが焚き火をしていたので僕もそこで暖をとらせてもらうことにした。

 

 

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「火があまり強くないけれど」とおじさんは言っていたが、それでもずいぶんと暖まることができた。おじさんが黙々と掃除をするなか、僕も静かに火にあたっていると、入り口のほうから小学生たちが集団で歩いてくるのが見えてきた。授業の課外活動でどこかに出かけていくのだろうか。引率の先生は見当たらなかったが、整った隊列を保ちながら子どもたちはしっかりとした足どりで雪道の上を歩いていた。その姿を見ながら、たしかに今朝宿のおじさんが言った通りだと僕は思った。みんな降り積もる雪に格別はしゃぐわけでもなく、慣れた様子で神社を抜け、万治の石仏のある方向へと歩いて行った(僕にとっては雪がひどかったのでそこに行くことは諦めた)。

 

 秋宮と春宮、どちらの境内のなかにも幹の太い、いかにも樹齢の古そうな数多の大木が存在していた。北欧神話の世界樹に象徴されるように、多くの神話のなかでも樹木は生命を表現するものとして用いられているけれど、そんな古い木々を見ていると安らいでくる気持ちがあるのも確かだった。しかしそれ以上に寒さがこたえてきたので、その場を去って宿に荷物を受け取ってから昼食をとりに行くことにした。

 

 宿に戻り、おじさんに別れを告げてから、諏訪地方の名物であるうなぎを食べることにした。口に含むと、とろけるように舌に絡んでいくうなぎはとても美味だった。熱燗と一緒においしくいただく。

 

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 店内に流れる筝の雅楽に耳をすませながら、何を考えるわけでもなくぼうっと午前中に見た景色のことを思い出していた。色々な景色が浮かんでは消えていったけれど、お酒の入った頭ではそれらの映像を結び合わせて何かを思考することはできなかった。

 

 時間が来たので駅に向かって電車に乗って雪の下諏訪駅を離れる。

 

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 電車とバスを乗り継いでおよそ三時間、旅の最終目的地である阿智村に僕は向かった。